“ラオスってどこ?”
信州大学経済学部 スタマウォン チャントゥナ

世界ではODA(政府開発機構)やJICA(日本国際協力事業団)からの支援が最も多いこともあって日本のことはよく知られています。ラオスでも日本からの支援は年々増える傾向にあります。道路や学校やなどの建設への支援はその一例です。したがって、日本のことはよく知られています。特に、2001年に日本の支援で、唯一ラオス国立大学で経済学部棟の建設やその隣に新しく出来た「ラオス−日本センター」では日本の文化はもちろん、日本語を勉強することが出来るので日本のことに興味を持っている人がどんどん増えています。
 日本に留学して、しばらく経つと日本の各地にホームステイや旅行などに出かけることが多くなり、いろいろ経験することができました。そのなかで、自己紹介をすることも多くなりました。私は、ラオスと日本は同じアジアの国でもあり、日本からラオスへの支援もあるので、ラオスのことはある程度知られているのではないかと思っていました。しかし私が自己紹介をした後、返ってきたのは“ラオスってどこ?”という質問でした。タイ、ミャンマー、中国、ベトナム、カンボジアのことを知っているのに、なぜラオスのことは知らないのかということがとても不思議でショックを受けました。なぜなら、ラオスはその五つの国に囲まれており、地理的にも遠いという訳ではありません。また、ラオスのことを知らないということだけでなく、ラオスはアフリカにあると思われたり、たくさん麻薬を作っている国だと思われたりすることもあると、先輩から聞いたことがあります。そのようなことがあってから、ホームステイをはじめ、イベントや交流会などにできるだけ参加するようにしています。それは、自分の日本語の上達の目標だけではなく、日本−ラオスの両国の友好のためにラオスの事を知らない日本人や日本学生に少しでも知ってもらうために活動や交流会などを通して接していきたいと思います。私は、2004年の4月から今年(2007年)の3月まで北海道にある函館工業高等専門学校の物質工学科で勉強しました。昨年(2006年)の4月、担任の先生とチューターであったクラスメートの協力を得て、日本にある特定営利法人「ラオスの子供」の会の絵本(ラオス語版)をオリジナルとしてラオスの有名な昔話の絵本を翻訳し、本校の予算で30冊ほど日本語版の絵本(“アヌサイと小さなお化け”という絵本)を作成しました。そこで、それらの絵本を市立函館図書館においてもらい、本校周辺の小学校に配当しました。それをきっかけに本校は高専機構初として、北海道地域のユネスコの支援でアジアの国々と交流を広めています。
 ラオスのことが日本であまり知られていないのには二つの理由が考えられます。一つ目は、ラオス、カンボジア、ベトナムは昔から仲が良くて、ベトナム戦争でアメリカと一緒に戦いました。特にラオスとベトナムの国境地域では激しい空爆にさらされました。そのとき、ラオスで多くの人々が被害を受けたにも関わらず、アメリカはその戦争をラオスとの戦争として認めなかったため、ラオスでどのくらいの人が被害を受けたかということは世界の人々はあまり知られませんでした。今でも不発弾や地雷が何も知らない大人や子供の命を奪うということが後を立ちません。
 二つ目は、日本ではラオスのことはあんまり取り上げられていないということです。日本の企業が進出した国や日本への輸出が多い国や日本との貿易をたくさんやっている国などは、ニュースでよく取り上げられ、特にその国への旅行がよく話題になっています。海に面していなく、地理的に工業に向いていないラオスは日本との貿易が東南アジアで最も少ない国です。ラオスのニュースをやったとしても貧困や国家・政治などに関することだけです。ラオス人はどのような国民で、どのような文化を受け継いできたのかということが取り上げられることはめったにないのです。ラオスは北朝鮮と同じく社会主義であることから、なかなか情報が入ってこないという現状もあります。
 私は、日本に留学してから自国にいたときよりも多くの情報や文化などに触れ合えることができるようになり、自国と他国の良いところ、悪いところを度々考えさせられることもあります。ラオスを外国の人と同じ観点から観察するとき、まだ改善する必要がある部分がたくさんあります。特に、情報はもっと公開するべきだと思われます。
 12年ほど前に「ルアンパバーン」と呼ばれるラオス北部に位置する古都の市街地自体が文化遺産として認定されました。また、その後カンボジアの「アンコールワット」を造る前の試作品とも言われているラオス南部にある「ワット・プー」も世界遺産として認定されました。このような背景を受けて近年、観光客数が増加する傾向もあって、現在政府は観光産業に力を入れています。ラオスでは自然に触れ合えることからヨーロッパからの観光客が最も多いです。日本からの観光客はまだ少ないですが以前よりも増加しています。観光のほかは、国土の約半分を占める森林から得られる木材の輸出、ナムグム・ダムをはじめとする水力発電施設による隣国タイへの発電供給、対外援助などが主な外貨源となっているラオスは隣国とともに変化し、発展し続けています。このなかでもとくに水力発電によってラオスは“東南アジアのバッテリー”とも呼ばれています。ラオスはランドロック(内陸国)で、東南アジアで最も人口の少ない国でありますが、東南アジア大陸部の輸送ハブとして機能することを希望されており、道路の整備や橋などが次々と建設されています。
 以上のような背景から、経済発展において重大な時期を迎えるラオスは様々な問題にも直面しています。特に、経済を発展していく上にどうしても避けられない環境の問題です。ラオスの教育のレベルはまだ低いため、外国政府の援助でその国へ留学し、知識や技術を学んでいる学生は年々増えています。私も将来母国でラオスがこれから直面していく様々な問題について日本で得た経験や知識を活かして、取り組みたいです。また外国の会社、特にその中でも技術力に優れている日本の会社を誘致する役割を果たしたいです。これからも、外国からの援助がたくさん必要ですが、ラオス自身も援助を待つだけではなく、本格的に発展する姿勢を表す時代がきたのではないかと思います。そのため、外国の人にラオスのことを正しく理解してもらうことが重要だと思います。この機会を少しでもラオスのことを知るきっかけにしていただけたらと思います。
 以前は、自国のことを知られていないことにがっかりしましたが、今は知らないのなら教えてあげれば良いではないかと思えるようになりました。ラオスのことを理解してくるのを待つだけではなく直接情報を伝えることも大切です。私が日本にいる間にどれくらい周りの人に正しい情報を教えられるかは重要な課題だと思います。そして、ラオスの人にも日本のことを正しく理解してもらうということも重要だと思います。